LOGIN「お前がッ、いつまでもそんなんだからッ、アイツが傷つくんだろうがっ!」 「分かってるよっ!……教えてくれよ。そこまで言うんだったら、教えてくれよッ。どうしたらアイツを守ってやれる?何をしたら…アイツを笑わせてやれるんだよっ!」 「言えば良いだろうがっ!好きだってッ!」 「言ってるんだよっ!何度も何度もっ!それこそアイツを好きだと気付いたランドセル背負ったガキの頃からっ!」 「なっ!?……マジかよ」「ハイ、カーット!!」監督の声が聞こえてボクとカンさん、二人で肩の力を抜く。 「これで今日の俺達の出番は終わりか?」 「恐らく?」 視線を監督のずっと後方にいる透馬兄に送ると、手でOKを作っている。 うん、あがって大丈夫そう。 「大丈夫そうだな。で?今日の読み合わせはお前の部屋でいいか?」 「はいっ」 ボク達は着替える為に楽屋へと戻った。 「俺は電話してから行くから先帰って待ってろ」 「解りました」 カンさんは帰る前にいつも娘さん達と奥さんに電話をしてから帰る。 それを知っているからボクは素直に先に家に帰る事にした。 勿論、透馬兄の送迎でだけど。 寮に到着して、自室へ帰る。陸は、SFの二人の所か。いつの間にあんなに意気投合したんだろう? アイドル対抗戦前にはバチバチ火花散らしてたのに。空は…確か今日は泊まりの収録だっけ? 手早く部屋着に着替えて、えっと台本と、あと簡単なおつまみ作っておこう。 カンさん、多分飲むだろうし。…見た目に騙されがちだけど、お酒飲んでる姿みたりすると…。 「立派なおっさん」 「……誰が立派なおっさんだ、こら」 「あれ?カンさん。もうお帰りに?」 「笑って誤魔化してんじゃねーぞ…おっ?今日のつまみも旨そうだな」 「鈴先輩直伝簡単おつまみなんで。絶対美味しいですっ!」 ミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出して。 ボクはそれを飲みながら、カンさんはお酒を飲みながら。 次の収録の為の打ち合わせをする。読み合わせを続けていくと、カンさんが少し休憩と言うのでボクも作ったおつまみを食べた。 「おい、海里。テレビつけるぞ」 「いいですよー」 ボクが許可を出そうが出すまいがテレビをつけるカンさん。『では次のニュースです』時間的にニュースが流れる時間だったみたいだ。 ボク達はぼーっとニュースを眺め
今日の収録は、山の八合目にある茶屋へ行っての食レポ収録。 アイドルの大会での宣言通り、オレは糸目と垂れ目…じゃなくってシュンとムクの三人で良く同じ番組に出演するようになった。 「………ぜー…はー…おま、マジかよ…」 「なんで、よりにも、よって、この番組選ぶ、んだよ」 「えっ?だってハイキングだぞっ?楽しいだろっ?」 「それはお前だけだってのっ、この体力バカっ」 「しかも、これは、ハイキングじゃなくて山登りって言うんだよ、馬鹿っ」 滅茶苦茶バカバカ言われた。 いや、オレが馬鹿だって事はちゃんと自覚はしてるんだぜ? けど、そんなに連呼しなくても良くね? 「ちょ、っと、マジで、休憩させろ」 「もう少し行けば、休憩茶屋あるらしいからそこまで頑張れっ」 「マジかー…」 二人のアイドルの先輩の背中を押して、山道を歩く。 オレ的にはまだ、何なら走れるくらいには体力残ってるんだけどな。 休憩茶屋に何とか辿り着いて、二人は店の中の座敷席に真っ直ぐ向かって行って、倒れた。 「陸実。ほら、茶と団子。あいつらに持ってってやれー」 「師匠。サンキュー」 師匠がお茶と団子をお盆に乗せてくれたから、それを持ってオレも座敷席に上がった。 テーブルの上にお盆を置いて、どっかりと座りこむ。 「ほら、シュンもムクも。ぐったりしてないで食えって」 「食えるかっ」 「シュン。今更遅いかも知れないけど、一応サブカメラ回ってる事思い出せ」 「いや、マジでもう無理だって。陸実と一緒にするな」 「まぁ、どうせここは使われないだろうけどな」 とか言いながらも二人はもそもそと動き出し、壁に背を預けてお茶を持った。 「食レポだけはしとかないとな」 「おら、陸実も笑え」 「おうっ」 メインカメラが動いた途端、アイドルな笑顔を使うこいつらは本当にプロだと思う。 そして、食った団子。みたらし団子だったんだけど、滅茶苦茶美味かった。 食レポ、収録終わり、二人からまた力が抜けきった。 「陸実。ほら、これ」 「え?何ですか?」 「姫ちゃんから差し入れのお握り」 「やったっ!」 ぽいぽいっと投げられた三個のお握りをしっかりキャッチして、さっき渡されたお茶をお代わりして美鈴センパイ手作りのお握りを早速食べる。 「お前、良く食えるな」 「ふぉーふぇふか?」 「
あれから一ヶ月が経過した。私は今、華菜ちゃんと逢坂くんの三人でテレビの前に待機している。本当は空良くんの様子を見つつ、静かに田舎に帰ろうかとも思ってたんだけど、奏輔お兄ちゃんがしっかりと鴇お兄ちゃん達と情報共有をしてくれたおかげで私は今も尚ここでこうしている。そして、何で私達がテレビの前にいるかと言うと。奏輔お兄ちゃんが、『結構良い感じに仕上がった。空良があんなにやる気に満ちた姿はレアやで』って言うので、これは見なきゃとなりこうして待機している訳です。アイドル番組とかあんまり見ないけど、これは対抗戦らしいので普通のアイドル番組とはちょっと違うっぽい。男子の部、女子の部で別れていて、その中でも競う競技が別れている。ダンス、演技力、トーク力、あとは歌とか。他にも様々な部門があるらしい。アイドル個人の実力を魅せる場、って奴みたい。女子の部にはユメも出るらしくて、全力で応援する為にスピーカーを購入しましたっ!だってちゃんと聞きたいじゃないっ!もしも、ユメの番の時少しでも機材故障とかされたら私ユメのモンペになる自信がある!即クレーム出しちゃうっ!……いや、しないけどね。クレームの対応って本当大変なんだよ…、本当に大変で…。「美鈴ちゃん?」「クレーム対応って地獄だよね…」「いきなりどうした、白鳥。目が虚ろだぞ?」「うへへへへ…」「駄目だな、こりゃ」どう言う意味かしら、逢坂くん?すっかりこの前、白鳥財閥店舗に視察に行った時、クレームオジサンに遭遇してバイトの女子高生が責められて彼女の代わりにクレーム対応したのを思い出しちゃったよ。えっと、なんだっけ。そうそうアイドルの対抗番組の話だよね。あー、っと?誰が何に出場するんだっけ?確か、ユメと空良くん、それからあの女子アイドル二人は歌の部。陸実くんはダンス、それから海里くんは演技の部、だったかな?そういえば審査の方法をちゃんと見てなかったっけ?テレビを見ると番組が始まり、審査員の紹介と審査の説明をしている。審査員には各十点ずつ持ち票があるのか。で投票点数が一番多い人が優勝。審査員には有名事務所の社長とか番組のスポンサー、後はアイドルでデビューして今はマルチタレントとして活躍している人とかがいるみたい。勿論その道のプロ的な人も一人いて、更には視聴者も得票数に入るようだ。視聴者票が一番多い
どの文字の犯人を捕らえるか。 二行目の女子感がある文字の犯人が一番探しやすいかな、と思ったんだけど。 女子だし。女子でアッフェを恨んでるって中々ないと思うんだよね~。 ……派手に振られでもして逆恨み、的な? なくはないと思うんだけどさ。う~ん……ユメに聞いた方が早い気もするけど…。 「……姫さん?」 「?、あれ?奏輔お兄ちゃん?」 「何してるん?」 「え?ズタボロにされたあの子達の制服を繕ってる」 「繕うって、あの惨状はもう買った方早ない?」 「んー…そうなんだけど。あの子達悲しそうな顔してたから。明子さんに買って貰った制服だろうしね。戻せるだけ戻しておいてあげようかな、って」 「成程な。けどな、姫さん」 「なぁに?奏輔お兄ちゃん」 「あいつらももう高校生なんだから、アップリケはやめてやってや」 「ふみぃっ!?可愛くないっ!?このお猿さんっ!?」 「いや可愛いか可愛くないかで言われると可愛いけども。そのアップリケが通じるのは流石に小学生までちゃうか?」 「……なんと言う…」 しょんぼりと肩を落とす。 なんてことなの…。アップリケ刺繍がダメなんて…。折角昔に作ったアップリケの活躍の場があると思ったのに…。 因みにこれ皆分あるんだよね。皆をモデルにして作ってるから。樹先輩の龍のアップリケを作るのどんなに苦労した事か…。鱗がある生き物は大変なんだからっ。 ……話がそれた。 取りあえず、私と奏輔お兄ちゃんはあの子達に新しい制服を用意して、仕事が終わるのを待ちそのまま寮へと送り届けた。 私がアップリケを縫ってしまった制服は、私が預かり捨てるのも勿体ないので縫いぐるみのお洋服としてリメイクして渡す事に決めた。そして翌日。 彼らを迎えに行った陸実くんの部屋で事件は起こった。 陸実くんが意識を失った状態で水を出しっぱなしにされた密室状態のバスルームに放置されたのだ。 大地お兄ちゃんが駆けつけて、陸実くんは事なきを得たけれど…。 陸実くんは病院へ大地お兄ちゃんが連れて行ってくれた。 私達がここに来た時、入れ違いで海里くんが何かを叫んで出て行って、慌てて私も追い掛けようとしたけれど、透馬お兄ちゃんが任せろと言ってくれたから私はその場にとどまる事にした。 水浸しの陸実くんの部屋に入ると、そこには空良くんがいて。ほっぺが赤いんだけ
「…なんでボクの家にお前がいるんだっ!」 「そもそもここお前の家じゃねぇし」 そう。ここは海里くんの家ではないし、寮の部屋でもない。 もっと言うなら、そもそも家でもない。 私が急遽取った旅館の一室でございます。 ホテルでも良かったんだけど、環さんの強い希望で旅館になった。 そして…何故私まで…? 「透馬お兄ちゃん、詳しく」 「いや、俺も解らない。むしろ何でここにいるんだ、俺達…」 「……ねー」 仲良く湯呑に入れたお茶を飲んでいる場合じゃないってのは解ってるんだけどね。 海里くんと環さんが一色触発状態でほっとく訳にも…ね。 「とにかく落ち着けよ。猿じゃあるまいし」 ……うーん。 なんか楽しそうだな~、環さん。 ちょっと見守ってようかな。 「この俺がわざわざ収録終わりの眠りこけてるお前を運んで来てやったんだろうが。感謝しろっての」 「感謝ってっ!」 「あ、それはちゃんと感謝しようね。海里くん。いつも思ってたけど、所構わず寝ちゃ駄目だよ?もう有名人だって自覚しようね」 「えっ!?あ、はい…」 「じゃあ、海里くんと環さんもお茶飲む?淹れるよ?」 「俺は酒の方がいいなぁ」 「この後お仕事ないんだったら構いませんよ~?ご飯食べに行く~?この旅館、飲食スペースあるらしいからさ。この部屋のお向かいがそうらしいよ?」 「あ、あのっ、鈴先輩っ」 「ご飯食べながら環さんに話を聞いたらいいよ~」 「だな。そうするか」 透馬お兄ちゃんが湯呑を置いて席を立ち、それにならって私も立つ。 環さんが暴れる海里くんをあっさりと小脇に抱えて一緒に部屋を出た。 目の前にある飲食スペースには机と椅子が四脚。 私と透馬お兄ちゃんが並んで座り、向かいには環さんと海里くんが座った。 丁度食事の時間だった事もあり、仲居さんが食事をお持ちしますと一言告げて廊下との境にある仕切りを閉めてくれた。 「鈴先輩。本当に聞いても良いでしょうか」 「どうぞー。好きに問い詰めてー」 許可を出した途端、海里くんはくるっと首を環さんの方へと向け立ち上がった。 何を言うのかな?と。私達は海里くんの行動を見ていたのだけど。 しゅるるぅと座り込んでしまった。 「何だ?何も言わないのか?」 環さんがニヤニヤと海里くんを煽る。 「………言う必要がなくなったので」 「
どの文字の犯人を探し当てるか。私は三行目の幼い感じの文字を書いた判別つきやすいかなって考え、その文字の人間を探すと判断した。まずは事務所に戻って、この文字を書いたのが誰なのかを調べる必要があった。そもそも莉良さんの事務所ってあんまり幼い子がいるイメージがないんだよね。あの子達やユメが年若い方の部類に入るって言う認識でいた。それはどうやら真珠さんや透馬お兄ちゃんもそうだったらしくて。透馬お兄ちゃんの運転で事務所に戻ったら案の定結果は私達の知る結果と大差なかった。「でもあれ、正直幼稚園児とか小学生の文字だよね?」「まぁ、文字だけ見るとそうかもしれねぇけど。文字が下手な大人なんて多々いるだろ」「あー、それは確かにー」そっちの線で調べた方が良いかもしれない。莉良さんに文字が下手で何書いているか読めない人って事務所含めどのくらいいる?と問うと数人の名前が上がって来た。その人物の名前だけメモを取って。事務所を出て透馬お兄ちゃんの車の中でスマホで画像検索をする。「……あ」「どうした?姫」「この人だけ見覚えがある」「どいつだ?」「このアイドルグループ縁舞(えんぶ)のリーダー」「どれどれ…あぁ、こいつか?」この前ナンパして来た人達の中にいたな~。って言うか、今縁舞で検索したら画像に出て来た五人。あの時ナンパして来た五人と一緒だわ。……アイドルって職業してるのにナンパってってどうなのよ。そう言えばこの人達面談受けなかったな。成程。前の社長に縁がある人達って訳ね。縁舞、サイン、で検索したら出て来ないかな?筆跡を確認する為に試しにサインを検索したら結構な数が出て来て。リーダーであるカンって人の文字が恐ろしいほど下手くそで、しかもあの紙の文字にそっくりだった。「……もう確定なんじゃない?」「だな。現場を取り押さえた方が早そうだから暫く泳がせとくか」「そうしよっかー」「って所で今日はもう送るからな」「うん。透馬お兄ちゃん、ご飯食べてく?作るよ?」「あー、寄りたい所だけど、鴇とちょっと約束あるんだよな」「そうなの?じゃあ鴇お兄ちゃん、ご飯いらないのかな?」「連絡して聞いてみたらどうだ?」「ふみ。そうする」なんていつも通りに過ごした日の、翌日の朝。事件は起こった。念の為にと、海里くん達の寮へと寄ったんだけど。「……陸っ!
それから、襲撃のある8日まで。私は、一日一回はあえて外出し、買い物をするようにした。と言うのも、お兄ちゃん達が、遭遇すると言う形を作りたいと言ったからだ。ゲームにより近づける為なんだって。私としてはお兄ちゃん達だけ危険な目に合わせるつもりは毛頭なかったから、即頷いた。むしろ一日一回で良いのかと聞き返してしまった位だ。けど余計なことをしてもまたお兄ちゃん達の計画を崩すだけだよねとちゃんと思い止まった。買い物をして、華菜ちゃんの家に帰って、華菜ちゃんのご家族の代わりにご飯を作って、パソコンを借りて一日分の仕事をして。これを数日繰り返した。…私、本当にこれでいいのかなぁ…?ちょっと不安に
「…美鈴?」声が聞こえて目を開くと、ママのドアップ。「美鈴。何をぼんやりしているの?早くその本を持って廊下に出てみなさい」そしてまたこのセリフ。私の手にはセーブの本。流石に二度も同じ事があれば、夢でも幻でもないって理解出来る。いや、元々夢の可能性は大分低かったんだけどね。そしてもう一つ、夢を否定するに思い至る理由がある。ここに、いつもママのドアップがあるこの時に戻る理由。こんな事現実的じゃないと思って、つい思考から排除してたんだけど…。でも…もう、そうとしか考えられない。私はやはり『手に持っていた』本を開いた。そこに書いてある文字は、私の文字。『ハートの意味が解らない。
私の視界は真っ暗闇の中。 ふっ。私を舐めないで貰いたいわねっ。 毎度毎度この真っ暗闇を見ていたら、もう分かるもんねっ! ズバリ、私は気を失っているっ!どやぁっ! ……。 ………。 ……………しくしくしく。全くもって威張れたことじゃないのよぅ…しくしくしく。 何で私はまた意識を失ってるのー…。 えっと…、私は何でこうなってるんだっけ?気を失う前は確か…。 確か私は旭と一緒に買い物した帰りに、旭に扮した表門の人に刺されてー…はて? そこから記憶がないと言う事は、私はあそこで気を失ったって事だよね? んで、今現在意識がない、と。そう言う事だよね? でも
※ このお話は本編である『乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも私、男性恐怖症なんですけど…』の三十話から続くお話です。まだ本編をお読みで無い方はまずは本編からお楽しみください。「姫。この鎖主体のデザインと、薔薇主体のデザイン、どっちが可愛いと思う?」「んー…、私としては薔薇の方が可愛いと思うんだけどー…、遠目から見てどっちが可愛いと思う?大地お兄ちゃん」「鎖デザインのネックレスと、薔薇デザインのブレスレットー。成程。姫ちゃんが一番可愛いー」「俺もそう思う。姫さんが一番可愛い」「確かに。姫が一番可愛いな」「ちょ、ちょっと三人共っ、デザインの話でしょーっ。私は関係ないでしょーっ。







